• アジア太平洋地域のビジネスリーダー800人を対象とした調査では、今後M&Aが最も活発に行われ、牽引していくのは全産業分野の中でもテクノロジー業界であることが判明
• ディストレスト投資の機会も、ディスラプティブ・テクノロジーと規制圧力により増加する見込み

アジア太平洋地域では、戦略的なM&A活動がパンデミック後の景気回復において重要な役割を果たすことになることが明らかになりました。企業は、技術やスキルの獲得に積極的に取り組む一方で、規制上の負担を軽減するためのダイベストメントに踏み出すケースもでると示しています。

「成長への道筋 – アジア太平洋地域の新たなM&Aの展望」と題した本レポートでは、アジア太平洋地域の800人のシニア・エグゼクティブを対象に、自社および各産業分野におけるM&Aに関する見通しを調査しました。

アジア太平洋地域の経営者は、今年から2022年にかけて、投資案件の組成が企業の再生と成長戦略に不可欠であるという明確なシグナルを発しています。回答者の77%は、今後1年間で属する産業のM&Aが増加すると予想しており、そのうち42%は取引が大幅に増加すると答えています。産業別に見ると、テクノロジー業界が圧倒的に強気で、4分の3以上(78%)が今後1年間で取引が大幅に増加すると予測しています。

回答者の半数以上(57%)が取引の要因として「新しい技術や関連する専門知識の獲得」を挙げ、ヘルスケア企業では74%、金融機関では85%、テクノロジー・メディア・通信企業では92%と高い数字を示しています。これは、急成長している企業がライバル企業や補完的なプラットフォームを買収したり、新しい市場に進出したりすることで、テクノロジー業界全体で大きく統合が進んでいることを示しています。

実際、「新しい市場への参入」も回答者の関心事の上位にランクインしています(40%)。多くのビジネスリーダーは、現在の市場で生き残るためには、渡航制限などがあっても、地域やグローバルでの事業活動を拡大する必要があると認識しています。

ベーカーマッケンジーWong & Leowシンガポールのマネージング・プリンシパルであるAndrew Martinは、「地域によって経済回復に格差がでるのは、各国がパンデミックの対応で様々な課題に直面していることが挙げられます。地域におけるM&Aは、特にテクノロジー企業の買収や金融機関のM&Aが堅調に推移すると予想されます。全体的な経済見通しは投資家に影響しますが、規制や新しい市場へのアクセス(つまり需要)などの要因もM&A取引の土壌を形成します。また、プライベート・エクイティやベンチャーキャピタル、インフラファンド、クレジットファンドなどの金融投資家や、ファミリーオフィスなども、この地域の取引環境に影響を与えるでしょう」と述べています。

例えば、消費財・小売業では、63%の企業が、旧販売・流通モデルがディストレス投資を牽引する最大の要因として挙げており、地域全体でのディストレスト投資の機会が増えると予想されています。

一方、あらゆる産業において、規制の強化が、倒産の可能性を高める主な要因の一つになると見ています。インドネシアとタイの企業は、規制の強化を最も懸念し、一方、インドの企業は、新たな規制の導入を最も懸念しています。

日本におけるコーポレート/M&Aリードおよびパートナーである高田昭英は、「日本企業は2021年に入り、非中核資産の売却や統合によるキャッシュが潤沢になっており、2021年後半から来年にかけて、再びアウトバウンドの買収に目を向けることになると見ています。COVID-19の影響で、多くの日本企業はより積極的にグループ内の事業資産に目を向け、コアビジネスへの戦略的な再集中や、過去数年間に進めた大型買収による負債負担の軽減など、非中核事業の売却を進めています。日本のM&A市場は、より細分化され、多様化しています」と述べています。

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