【東京発 2017年4月27日】ベーカーマッケンジーとマージャーマーケット(Mergermarket)が共同で発表しているCross-Border M&A Indexによれば、2017年第1四半期において、日本企業が、アジア・パシフィック地域からのアウトバウンドM&A活動を牽引しました。

日本企業によるアウトバウンドM&Aが活況

堅調だった2016年に引き続き、日本企業は、2017年第1四半期もクロスボーダーM&A取引を積極的に進め、日本企業がアジア・パシフィック地域からのアウトバウンド投資をリードしました。日本企業による買収案件数は63件、取引総額は147億米ドルに達しました。

日本企業によるアウトバウンドM&A案件は、金融サービス、電気通信、製造業等、多数の業種にわたり、取引額として最大となったのは、武田薬品工業による米国のバイオテクノロジーに強みを持つ製薬企業アリアド社の買収案件(取引価額:49億米ドル)でした。日本企業によるアウトバウンドM&A案件における相手企業を地域別に見ると、北米、アジア・パシフィック、EUの順でした。

2017年第1四半期日本企業によるM&A

出典:2017年第1四半期「Cross-border M&A Index」 (マージャーマーケット)

製造業への集中

2016年の製造分野におけるクロスボーダー案件数は942件で、前年比23件増、金融危機以降最高水準となりました。また、取引額も1,168億米ドル(対前年比48%増)と、金融危機以降最高となりました。日本は2016年から2017年第1四半期までの期間において製造分野で最も活発に買収が行われた国のひとつでした。

製造分野での買収が盛んな国 2016年~2017年第1四半期

ベーカーマッケンジー東京事務所、コーポレート/M&Aグループの共同代表を務める高田昭英は、「日本企業に対して事業再編とさらなる成長を求める市場からの圧力は、ますます高まりを見せています。国内市場における成長余力は限られているため、外国企業の買収を中期経営計画において重点戦略のひとつに掲げる企業は昨年から引き続き多く、2017年第1四半期における日本企業のアウトバウンド取引への意欲の高まりは、特に目新しい動きというわけではありません。世界情勢への懸念や先行きの不透明感から企業がより慎重であった昨年に比べて、多くの企業が世界進出戦略に自信を取り戻しつつあるということは言えるでしょう。この傾向は日本企業の中期戦略のもと継続することが予想されますが、世界情勢や他の投資環境をめぐる急激な変化に対してはなお慎重な対応をとる企業が多いでしょう」と述べています。

世界規模で見ると、リスボン条約第50条の発動、トランプ政権をめぐる先行き不透明感、EU各国における激しい選挙戦が相まって、2017年第1四半期にはM&Aマーケットに対し下向きの圧力が加わりました。世界でのクロスボーダーのM&A案件数は、前年同期比18%減となる1,238件でしたが、取引額は3,312億米ドルで、前年同期比わずか3%の減少にとどまりました。

中国企業のM&A活動の減速やフランスの大統領選など、不確実要素を含む第2四半期の見通しは予測困難ではあるものの、企業の景況感や平均取引額の増加(2016年第4四半期比15%増の5,370億米ドル)に照らせば、取引件数が低水準で推移したとしても、M&A取引額は堅調を維持することが予想されます。

ベーカーマッケンジーのCross-Border M&A Indexレポートの全文(PDF)は、こちら(英文のみ)からご覧いただけます。

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