• アジア太平洋地域のビジネスリーダーを対象とした調査では、貿易紛争と保護主義が懸念事項の上位
• 保護主義の高まりも、法的サポートを必要とするリスクの上位
• 回答者のほぼすべてが、海外投資規制の変化に伴い投資戦略を変更

貿易紛争と保護主義の台頭は、今やアジア太平洋地域の大企業を率いる経営者が抱える最大の懸念事項となっており、その結果、サプライチェーンに大きな変化がもたらされていることが報告されています。

アジア太平洋地域の800人のビジネスリーダーを対象にした2021年第1四半期の調査*によると、回答者の3分の2(67%)が、サプライチェーンや生産拠点の変革をすでに行っているか、現在行っていると回答しており、日本とオーストラリアの回答者が最も大きな変革を予定しているとしています。

今回の調査では、大多数の企業が拠点国内回帰(46%)、拠点近接地域回帰(78%)、内製化(67%)、新規地域の開拓(73%)、またはこれらの組み合わせを行っていることが明らかになりました。アジア太平洋地域で事業を展開している企業は、供給先に関するリスク軽減を求め、さらにコスト面よりも地政学や規制上のリスクを重要な決定要因としているため、これらを総合すると、グローバル・サプライチェーンが大きく再編していることを示しています。

一方で、外資規制の強化は、企業が生産拠点をどこに置くかにも大きな影響を与えており、調査対象となったビジネスリーダーの97%が、投資障壁の低い国や地域、また国内への投資に注力するようになっています。

しかし、アジア太平洋地域におけるサプライチェーンの変革を成功させるためには、法律や規制に関する膨大な課題が残されています。

本レポートでは、は、「アジア太平洋地域の国々は人口増加によるその経済的規模にも関わらず、、地理的・政治的状況の多様性、法的確実性、ビジネスのしやすさ、外国人投資家に対する投資インセンティブがサプライチェーン多様化の課題として挙げられます。一般的に、様々なビジネス言語が使用され、また一つの国がサプライチェーンハブとして機能しているわけでないため、各国間で異なる法的・ライセンス要件、規格標準を合理化することが今後の重要な課題である」と指摘しています。

マクロ経済の観点から見ると、全体的には比較的明るいニュースが多く、回答者の半数以上(58%)が2021年末までに収益が2019年の水準に戻ると答え、14%がすでにパンデミック前の売上に戻っていると回答しています。しかし、業界別に見ると、より大きな違いが表れます。テクノロジー、ヘルスケア、消費財・小売業のビジネスリーダーたちは、短期的に完全に回復すると見る一方、工業・運輸・エネルギー業は、成長が回復するまで2~3年は苦戦するだろうと見ています。

アジア太平洋地域の企業が他のどの国を供給先としたいかという点では、オーストラリアが現在トップで、これはCOVID-19の鎮静化に成功していることが反映されていると考えられます。

アジア太平洋地域の国際商業・貿易担当責任者であるAnne Petterdは、「調査回答者の約3分の2(62%)が、地域包括的経済連携協定(RCEP)がビジネスのしやすさにプラスまたは非常にプラスの影響を与えると回答しており、貿易関係を継続的に発展させるためのポジティブな手段も残っています。この地域の国々は、地理的、文化的、経済的に多様なため、保護主義の台頭や世界的な貿易摩擦に対する各国政府の対応も様々です。この地域がこれらのハードルに立ち向かうための一つの方法は、共通の基盤を見つけて協力することです。貿易の非関税障壁に取り組むメカニズムを含む地域包括的経済連携(RCEP)のようなイニシアチブは、貿易を促進し、より広範な世界的リスクを軽減するのに役立ちます」と述べています。

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