ベーカーマッケンジーでは、「Hyper-Hybridity(高度ハイブリッド化): アジアにおけるデジタルヘルスの新定義」と題した新たな報告書(英語)を発行しました。

デジタルヘルス市場は世界的に活況を呈しており、2023年までに2,350億米ドル規模に達するとの予測があります。特にアジア太平洋地域では、人口の急増、テクノロジーを利用したヘルスケアサービスに関心の高い中所得者層の増加、さらには医師の不足が、デジタルヘルス分野におけるイノベーション創出を後押しし、さらにはCOVID-19が、将来に向けたデジタルヘルスのソリューションとシステム開発を喫緊の課題として浮き彫りにしました。その結果、従来型ヘルスケア分野は4.7%のマイナス、一方デジタルヘルス分野は12%の成長が予測されています。

新報告書では、アジア太平洋地域におけるデジタルヘルスを取り巻く環境での主要プレーヤー、すなわちヘルスケア・ライフサイエンス企業、テクノロジー企業および金融機関投資家の見解を比較し、横断的に分析しています。750名の担当役員を対象とした本調査では、新しいソリューションの導入やシステムの構築といった市場からの圧力が高まっていることから、各プレーヤーがデジタルヘルスの開発を優先していることが明らかになりました。また、全回答者の74%が、ヘルスケアを取り巻く環境全体での連携が、進展を大幅に加速させる点に同意しているにもかかわらず、ヘルスケア・ライフサイエンス企業の78%は、グローバルテクノロジー企業がヘルスケアサービスの向上よりも商業的な部分を優先していると回答しました。一方、テクノロジー企業の71%は、ヘルスケア企業が新しいソリューションを運用するためのテクノロジーのノウハウを欠いていることが多いと回答しています。

本報告書では、各国政府による複雑かつ厳格な規制や、各グループの利害の不一致が、イノベーション加速の足かせになっているものの、調査対象の投資家が220億米ドルの新たな資金をデジタルヘルス・イノベーションに費やすとしているなど、デジタルヘルス分野が発展する要素は依然大きい点について論じています。また従来中国、韓国、インドおよび日本が中心となっていたアジアのデジタルヘルス市場において、新たにシンガポール等の国々が台頭している点について着目します。

アジア太平洋地域におけるデジタルヘルスの加速には5つの重要な要因があることが本調査で明らかになりました。

• COVID-19から生じた伝統的医療システムと管理における破壊的変革
• デジタルヘルス・テクノロジーの進歩
• 医療システムのコスト圧力
• 景気が悪化する中、医療分野は投資の「安全な避難地」との認識
• 個別化された患者ケアを提供するための要件

ベーカーマッケンジー東京事務所ヘルスケア・ライフサイエンス担当の立石竜資は、「デジタルヘルス分野において革新的な製品・サービスを展開するには、様々なバックグラウンドをもつプレーヤー間の利害の調整・権利の保護、技術革新に対して対応の遅れがちな医療関連規制との調整など、数多くの法律上の検討事項がありますが、デジタル化の動きは、これらの問題に向き合いながらも力強く進められています」と述べました。

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