日本企業が米国訴訟に巻き込まれた場合に最も時間と労力を費やすこととなるのがディスカバリー手続である。ディスカバリー手続では、相手方から広範囲の文書の開示が求められ、センシティブな情報や秘密情報を含む文書も開示の対象とされ得る。このようなディスカバリー手続において、相手方からの文書開示を拒むことができる場合があり、その主なものが弁護士依頼者間秘匿特権(attorney-client privilege)である。

弁護士依頼者間秘匿特権は、依頼者と弁護士間の法的助言に関するコミュニケーションを保護するものであるが、弁護士の依頼者への関わり方が多様となっている昨今においては、依頼者と弁護士間のコミュニケーションの目的が、法的助言に関するものにとどまらず、ビジネスに関する助言等、別の目的も併存している場合があり得る。では、このようなdual-purpose communicationsは、弁護士依頼者間秘匿特権として保護されるのだろうか。

Dual-purpose communicationsが弁護士依頼者間秘匿特権として保護されるかという点に関して、これまで連邦地方・連邦控訴裁判所で判断が分かれていたが、先般、連邦最高裁判所はdual-purpose communicationsが争点となった第9巡回区連邦控訴裁判所の判断について上訴を受理した。これにより、この問題について初めて連邦最高裁判所の判断が下される可能性がある。

本アラートでは、当該第9巡回区連邦控訴裁判所の事案を基に、dual-purpose communicationsに関する弁護士依頼者間秘匿特権の議論について紹介したい。

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