日本企業の事業がグローバル化する中で、日本企業が米国において訴訟に巻き込まれる事案は多くなっている。米国で日本企業を相手方とする訴訟に管轄権が認められるためには、日本企業と裁判所が存在する地域との間にミニマム・コンタクトが認められる必要があるが、昨今のデジタル技術の発達により、日本企業と当該地域との間に一定の結びつきが認められ、管轄権が肯定される可能性は高くなっている。しかしながら、管轄権が認められる場合であっても、事案の内容や性質からして、米国の裁判所ではなく日本の裁判所において判断される方が適切である場合があり、このような場合に訴えの却下が認められる法理が、フォーラム・ノン・コンビニエンス(forum non conveniences)である。

最近の米国連邦地方裁判所の判例では、英国人の原告が米国のデジタル技術会社を相手方として、英国の一般データ保護規則違反を理由にクラスアクションを提起したが、同裁判所は、英国の裁判所で判断される方が適切であるとして、訴えを却下した。日本企業にとっては、コストや言語の観点から、一般的に米国より日本において訴訟を行う方が有利であるため、本稿では、フォーラム・ノン・コンビニエンスの法理の概要と、当該連邦地方裁判所の判例をご紹介したい。

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