2018年2月6日、欧州議会はEU域内における「不当な」ジオブロッキング及びその他の方式による顧客の国籍、居住地、所在地等に基づく差別を禁止する新規則(以下、「本規則」)案を可決し、デジタル単一市場の実現に向けて一歩前進しました。本規則は、「正当な」理由なくEU域内の顧客を差別することを禁止することで、域内における国境を越えたオンライン販売の障壁を取り除き、消費者にEU単一市場で最適な商品・サービスを求める機会を提供することを目的としています。

本規則は2018年末の施行が予想され、企業においては短期間で対応を検討する必要があります。

誰にどのような影響があるか?

本規則は、EU域内における事業拠点の有無に関わらず、域内の消費者に製品またはサービスを提供するすべての取引業者に適用されます。従って、原則として、EU市場で製品またはサービスを提供することにより、本規則の対象となる取引業者は、以下のような取引慣行について見直しを行うことが必要となります。

  • 特定の加盟国の顧客について、他の加盟国の顧客に向けた流通チャネル/条件での商品またはサービスの購入を認めていない
  • 国籍または居住地により、オンライン・インターフェース(例:ウェブサイトやアプリ)へのアクセスを制限またはブロックしている
  • 顧客の事前の明示的な承諾なしに、自動的に経路を変更して各国サイトに誘導している

本規則の適用範囲

本規則には重要な適用除外項目が設けられており、例えば、運輸サービス、視聴覚サービス、リテール金融サービス等は本規則の対象には含まれません。また、取引を構成するすべての要素がある特定の加盟国内に限定される、純粋な「国内」取引にも本規則は適用されません。重要なポイントとして、B2B取引において購入業者が製品またはサービスを最終消費目的で(再販・レンタル・業務委託目的ではなく)購入する場合には本規則が適用されます。

さらに、著作権保護の対象となるコンテンツには本規則は適用されないため、オンラインテレビ、映画、電子書籍、ダウンロード可能な音楽、オンラインゲーム、スポーツのストリーミング等のサービスについては、現段階では本規則の影響は受けないことになります。

他の加盟国のユーザーによる著作権保護コンテンツへのオンラインアクセスを阻止するための技術的手段の使用は当面は認められますが、EUは現在、2020年をめどに本規則の適用除外範囲を縮小することを検討しており、欧州委員会も、視聴覚サービスおよび運輸サービスを含めて本規則の適用拡大に向けた見直しの検討に合意しています。

何が禁止されるか?

EU域内での不当なジオブロッキング及びその他の方式による顧客の国籍、居住地または所在地に基づく直接・間接的な差別が禁止されます。これに伴い、オンラインインターフェースにアクセスする際に使用されるIPアドレスや商品の配送先として提供される住所、選択された言語、決済手段の発行元の所在する加盟国といった情報に基づく差別も禁止されることになります。

本規則の執行

本規則には特定の制裁が定められておらず、取引業者が本規則に違反した場合の罰則等については、加盟各国の裁量に委ねられることになります。但し、本規則は加盟各国に対し、本規則の遵守状況の監視と効果的な執行とを遂行する機関を定めるよう求めています。

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