税務及び移転価格の観点から見た米国及び世界の関税に係る変更による影響と取り得る緩和策
今般、トランプ政権が提案したカナダ、メキシコ、中国、EU等からの輸入品に対する米国の関税引き上げ案と、米国の関税引き上げ案の影響を受ける国・地域において予想される対応は、多国籍企業(MNE:Multinational Enterprises)が検討すべき移転価格に様々な影響を及ぼすことになる。これらの関税は、企業間で国境を越えて商品を移転する際に、コストの増加や潜在的な二重課税の問題をもたらしたり、独立企業原則を遵守・維持する課題に直面したりする可能性がある。
留意すべき重要な問題は、関税により増加するコストを負担するのはどの企業か、ということである。
コスト増加分は、影響を受ける商品の消費者価格の上昇という形でエンドカスタマーに転嫁するという基本的な考え方があるが、これはすべてのケースで可能というわけではない。このような場合において、サプライチェーン内のどの企業がコスト増加分を負担すべきか、あるいはコスト増加分が依然として、税務上損金算入可能であり、コスト増加分の取扱いが独立企業原則及びグループの確立された移転価格ポリシーに沿ったものであるかを確認することが重要である。